業界・コラム

2027年、東京に自動運転タクシー。それでも運転手がすぐには消えない4つの理由

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はじめに

「2027年には東京で無人のタクシーが走り始める」
「それならタクシーやハイヤーの運転手は必要なくなるのでは?」

こうしたニュースを見て仕事の将来が気になった方もいると思います。

私自身、ハイヤードライバーとして働く立場から自動運転の動向には関心があります。

そして長期的にはハイヤーも含めて、自動運転に置き換わる仕事が増えていくと考えています。

ただし短期・中期で今の仕事が広く置き換わるかというと、そこにはまだ大きな壁があると思っています。

車が自動で走れることとお客様を乗せた仕事を丸ごと任せられることには距離があるからです。

この記事ではすぐにドライバーの代替が進むとは考えにくい4つの理由と、AGIの普及を踏まえて長期的には置き換えが進むと考える理由を現場目線で解説します。

※2026年9月16日時点の公表情報と、筆者個人の見解に基づく記事です。

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2027年、東京で自動運転タクシーが走る計画とは?

Waymo、GO、日本交通は、2027年に東京で完全無人のタクシーサービスを開始することを目指しています。計画は国や自治体の許認可、技術と運行体制の検証が前提です。

最初の車両群から段階的に拡大し都内の主要エリアで約100台を目指すとしています。出典:Waymo公式発表

ここで注目したいのは「東京のタクシーが2027年に一斉に無人になる」という話ではないことです。

一定のエリアでサービスを始めることと有人タクシーが対応している幅広い運行を引き受けることは別の段階です。

私はこのニュースを大きな転換点だと感じています。

ただ運行開始の年だけを見て「もう運転手はいらない」と結論づけるのは早いと思います。

すぐに運転手が置き換わらないと考える4つの理由

事故の補償だけでなく原因と責任を説明できるか

まず気になるのが事故が起きたときの責任です。

国の検討ではロボタクシーの運送主体となる事業者が、原則として自賠法上の「運行供用者」に当たると整理されています。

これは人身事故の被害者への賠償に関わる仕組みです。参考:森・濱田松本法律事務所による2025年の国交省報告書解説

そのうえで私が課題だと感じるのは、実際の事故で「なぜ起きたのか」「誰がどこまで責任を負うのか」を明らかにする部分です。

車両の不具合なのか、システムの判断なのか、整備や運行管理の問題なのか。

関係する企業が複数あれば確認する内容も増えます。

被害者への補償と企業同士の最終的な責任分担、刑事責任は、それぞれ分けて考える必要があります。

お客様や社会が知りたいのは保険で支払われるかだけではありません。

「なぜ事故を防げなかったのか」「どうすれば同じ事故を繰り返さないのか」という説明も求められます。

こうした対応を実際の運行の中で積み重ね、信頼を得ていくには時間がかかると思います。

法令を守る運転と、実際の交通の流れにずれがある

現場で運転していると道路上のすべての車がルールどおりに動いているわけではないと感じます。

例えば夜の首都高。

制限速度が60km/hの区間で周囲の車がそれより速く流れている場面を目にすることがあります。

「流れに乗っていれば大丈夫」と考える人もいるでしょう。

が、自動運転は法令遵守が徹底されるでしょうし「人間と同じように違反してほしい」と求めるのは筋違いです。

それでもこの現実とのずれは普及を考えるうえで無視できません。

法令どおりに走る車と必ずしもそうではない車が混在する道路で、安全性と円滑さをどう両立するのか。

急いでいる利用者が「ガラガラの首都高で60km/hジャストでノロノロ走る車」に対してどう思うか?という問題です。

さらに交通には速度以外の判断もあります。

  • 合流で相手が譲ろうとしているのかを読み取る
  • 狭い道路でどちらが先に進むか判断する
  • 工事現場で誘導員の指示を理解する
  • 乗降場所が塞がっていたときに安全な代替場所を探す
  • 大雨、大雪の際の状況判断

自動運転がこうした場面に一切対応できない、と言うつもりはありません。

技術が進歩すれば対応できる範囲も広がるでしょう。

ただ悪天候などさまざまな状況で法令を守りながら、それを毎日の営業として安定して続けるには十分な検証が必要だと思います。

「法令を守りすぎること」自体よりも法令と現実の交通のずれを社会全体でどう埋めるかが課題なのです。

事故率が下がっても被害者や社会が納得するとは限らない

私は自動運転の普及には技術以上に「人がどう受け止めるか」が影響する場面もあると考えています。

仮に人間の運転より事故が少ないと示されても、自動運転車が人を傷つけたときに社会が冷静に受け止めるとは限りません。

実際Waymoは米国での運行について、対象地域の人間の運転と比較し負傷事故などが少ないという分析を公表しています。

ただしこれは同社の運行条件に基づく結果であり、日本のあらゆる道路やすべての自動運転車にそのまま当てはまるものではありません。出典:Waymo安全性データ

ここで難しいのは社会全体の事故率と目の前で被害に遭った人の気持ちは別だということです。

「人間が運転するより事故は少ないです」と説明されても、自分や家族が被害に遭えばそれだけで納得できるとは思えません。

一度死亡事故が起きればメディア等で相当なバッシングが起きることが予想されます。

一方で自動運転による事故だけが強く問題視され、全体として事故を減らせる可能性が十分に評価されなければ導入の議論が進みにくくなることも考えられます。

私は日本での普及を考える際にも、この「数字だけでは受け入れられない壁(ゼロリスク思考=新しいテクノロジーに対して”完璧”を求める国民性)」を軽く見られないと思います。

ただしこれは日本だけの問題とは限りませんし、被害者感情を単なる「お気持ち」で片づけてよい話でもありません。

事故を減らす実績に加えて事故後の説明、被害者への対応、再発防止まで含めて納得できる仕組みをつくる必要があります。

ハイヤーは「目的地周辺」ではダメ

ハイヤードライバーとしては、特に気になるのが乗り降りする場所の判断です。

ハイヤーでは目的地の住所に到着するだけでは不十分な場面があります。

同じ建物でも正面玄関、車寄せ、地下駐車場、関係者用入口など、複数車寄せがある場合が多々あります。

さらにその日の状況やスケジュールによって適切な場所も変わります。

  • 雨に濡れにくい位置で降りていただく
  • お客様が利用する入口に合わせて車を着ける
  • 警備員や施設担当者の案内に従う
  • 工事や混雑で普段の車寄せが使えなければ対応を変える
  • 歩く負担や荷物の量を考えて乗降場所を調整する

もちろん人間の運転手も安全や法令、施設のルールを無視して停車できるわけではありません。

その範囲内でお客様にとって適切な場所を探すのが仕事です。

「目的地の近くなので、あとは歩いてください」

これで済む移動もありますが、ハイヤーでは入口までのわずかな距離や乗り降りのしやすさがサービスの評価に関わります。

自動運転でも乗降場所を細かく登録したり、施設と連携したりすることで対応できる場面は増えると思います。

それでも初めて行く場所や当日の変更まで含めてどこまで任せられるのか。

ここは道路を走る能力とは別に確かめる必要があります。

私はこの「最後の数メートル」の判断にハイヤーならではの難しさがあると考えています。

長期的には置き換わると考える理由|AGIが普及すれば、社会の前提も変わる

ここまで課題を挙げましたが、私は長期的にはハイヤーも含めて自動運転への置き換えが進むと考えています。

その大きな理由がAGIのような幅広い仕事に対応できるAIが社会に普及していく可能性です。

今の自動運転にできないことだけを見て、将来も人間にしかできないと判断するのは早いと思います。

技術だけでなく利用者の意識やサービスを支える社会の仕組みも変わる可能性があるからです。

AGIとは?「幅広い状況を理解し考えるAI」

AGIは「汎用人工知能」と呼ばれます。

定義には幅がありますが、ここでは特定の作業に限らず、人間のように幅広い知的な仕事に対応できるAIという意味で使います。

研究でも能力の高さだけでなく対応できる仕事の広さなどから整理されています。参考:Google DeepMind「Levels of AGI」

例えば予定の変更を理解し、必要な相手に確認し、複数の条件を踏まえて行動を組み立てる。

こうした能力が高まり、日常の仕事やサービスに組み込まれた社会を想定しています。

ただしAGIの実現時期や普及の速度は断定できません。

ここからはそのようなAIが広く使われるようになった場合の私なりの考察です。

また自動運転の実現にAGIが必須というわけでも、AGIができればすぐに安全な無人運行が完成するわけでもありません。

車両の制御や安全性の検証は別に必要です。

「人間にしかできない判断」の範囲が狭まる可能性がある

現在のハイヤー業務では状況に応じた判断が求められます。

例えば「いつもの入口が工事中」「お客様が足を痛めている」「雨が強くなってきた」という条件が重なったとき、どこで降りていただくのがよいかを考えます。

将来AIが周囲の状況やお客様の要望を理解し、施設の情報も確認できるようになればこうした判断の一部も任せられるかもしれません。

実際自動運転の研究では、言語や画像を扱うAIの知識を運転に活用する取り組みが進められています。

ただしその研究成果をそのまま万能な運転能力と捉えることはできません。参考:Waymoの自動運転研究「EMMA」

私が長期的な置き換えを考えるのは、今のAIの限界がそのまま将来の限界になるとは思わないからです。

「今は人間の経験が必要」ということと「将来も人間にしかできない」ということは違います。

社会全体がAIに慣れれば無人の車への抵抗感も変わる

もう一つ大きいのが利用者側の変化です。

もし仕事の相談、予定の調整、予約、問い合わせなどをAIに任せることが日常になれば「機械に判断を任せる」という行為への感覚も変わると思います。

その延長で「移動もAIに任せたい」と考える人が増える可能性があります。

もちろん日程調整を任せることと、命に関わる運転を任せることでは必要な信頼の水準が違います。

AIに慣れただけで事故への不安がなくなるわけではありません。

それでも安全な運行実績と日常での利用経験が積み重なれば、「人が運転していないから不安」という抵抗感は今より小さくなるかもしれません。

一方大きな事故や不誠実な対応があれば信頼は後退するでしょう。

普及が進めば必ず受け入れられる、とまでは言えません。

私は現在の社会の受け止め方をそのまま何十年先にも当てはめるべきではないと考えています。

車だけでなく施設や予約の仕組みもAIに合わせて変わる

ハイヤーの「最後の数メートル」の問題も車単体の性能だけで考える必要はないと思います。

例えば将来こんな仕組みが整ったらどうでしょうか。

  • 施設が利用可能な車寄せや入口の情報を配信する
  • 工事や通行制限が自動運転車に共有される
  • お客様の同意のもと歩行への配慮や希望する入口が予約時に伝わる
  • AIが施設側と確認し安全に乗降できる場所を事前に調整する

こうした連携ができれば今はドライバーが経験や事前確認などで補っている部分を仕組みとして処理できる範囲が広がります。

これはAGIだけで実現するものではありません。

施設の協力、情報の標準化、セキュリティ対策、費用負担も必要です。

ただ幅広いAIが社会に普及すれば、そのAIと連携しやすいように施設やサービスを整える動きも強まるのではないかと思います。

「今の道路や施設に自動運転車を合わせるだけでなく、社会の側も自動運転を使いやすい形に変わる。」

これも長期的な置き換えを考える理由です。

法令と交通の実態のずれについてもAIに違反を覚えさせるのではなく、乗降場所の整備や道路運用の見直しなどで解消を図る方向が考えられます。

「接客があるからハイヤーは安泰」とも言い切れない

ハイヤーには接客があります。

ただそのすべてが対面でなければ成立しないとは限りません。

行き先の確認、予定変更への対応、好みに合わせた車内環境の調整などは将来のAIが担える範囲に入ってくる可能性があります。

一方で荷物を運ぶ、傘を差す、乗り降りを手助けするといった仕事には身体を使った対応が必要です。

AIの判断能力が高まるだけで自動的に解決するものではありません。

それでも施設のスタッフが対応したり、自動運転車に接遇担当者が乗ったりする形は考えられます。

その場合人によるサービスは残っても、「人が運転する必要性」は小さくなるかもしれません。

もちろん人間の運転手による細かな接遇を求めるお客様も残るでしょう。

ただそれが今と同じ人数のドライバーを必要とするかは別の話です。

私はハイヤーというサービスが残ることと、現在のドライバーの仕事が同じ形で残ることは分けて考える必要があると思っています。

短期・中期は「共存」、長期は「任せられる仕事の拡大」

私が想定しているのはAGIの登場と同時にすべての運転手が不要になる未来ではありません。

対応できる地域や用途で無人運行が広がり、AIの能力、運行体制、施設との連携、利用者の信頼が整うにつれて任せられる仕事が増えていく流れです。

事故の責任に関するルールは人間の社会が決めるものです。

車両の安全性、悪天候への対応、導入や保守の費用も、AIが賢くなるだけでは解決しません。

だからこそ私は「長期的には置き換えが進む」と考える一方で、「短期・中期に幅広く置き換わるのは難しい」と考えています。

ここでいう短期・中期・長期は、何年後と断定できるものではありません。

AGIという名前の技術が発表されたかより、現場で何を安全に、安定して、採算を合わせて任せられるかを見る必要があります。

ドライバーとしては今求められている安全運転や接遇を磨きながら、実際に無人化される業務の範囲を見ていく。

それが現実的な向き合い方だと思います。

まとめ|今ある壁が将来も残るとは限らない

私は長期的にはタクシーだけでなく、ハイヤーにも自動運転への置き換えが進むと考えています。

その理由は自動運転車の性能向上に加えてAGIのような幅広いAIの普及が、状況判断、利用者の意識、施設との連携、接客のあり方まで変える可能性があるからです。

一方で短期・中期には事故時の対応、複雑な交通の実態、社会の信頼、細かな乗降対応などの壁があります。

これらがAIの進歩と同時にすべて解消するわけではありません。

「今は難しいから、将来も無理」とも、「将来できるからすぐに仕事がなくなる」とも考えない。

2027年の運行計画を見て私が大切だと感じるのはこの時間軸を分けた見方です。

現場の難しさを知っているからこそ短期的な代替には慎重ですが、今の常識が長期的にも続くとは思っていません。

日々の仕事を大切にしながら、変化には備えていきたいと思います。

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この記事の筆者
りょう
りょう
現役ハイヤードライバー
30代、40代、50代からでも最高の転職を!
都内大手ハイヤー会社で働く現役のハイヤードライバー。
前職までは飲食業に従事し、うつ病直前まで疲弊するもハイヤードライバーに転職して人生が劇的に好転。
普段脚光を浴びることの少ないハイヤードライバーという仕事について、いい事も悪い事も赤裸々にお伝えしていきます。
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